Sky Tradition

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小説


魔女リリア

2013.01.13  *Edit 

 遠くで悲痛な叫びを聞いた。私……ミスティアは体に巻きついた白いもの……糸が徐々に緩んでいくのを感じた。いや、緩んでいるのではなく、消滅していっている。
「糸が……消えていく?」
 やがて糸は完全に消えた。私もウォレスも自由になった。
 誰かが蜘蛛……スパイガルを倒してくれたんだよね、きっと。だから自由になれた……。ウォレスも身動きが取れるようになってホッとしている様子。
 と、蜘蛛が出入りしていた穴から物音がした。ウォレスがすぐさま反応し、構える。バタバタと、鳥が羽ばたく音に聴こえた。
「セルシア?」
 現れたのは一羽の鳥だった。まさしく、ウォレスの愛鳥だった。真白の、美しい鳥は、ウォレスの頭上を飛び、旋回して彼の肩、というか背中あたりにとまった。……結構大きくなったな、セルシア。
 嬉しいのか、ウォレスの頬をスリスリしている。
「僕は大丈夫だよ。セルシアも無事でよかった」
 彼は笑顔だった。なんだか懐かしいな……。
「ウォレスー、いるのー?」
 次に現れたのは、二人の男性……。
「無事みたいだね。よかった。あ、もしかして隣の方は……?」
「……あ、はい、彼女がミスティアさんです」
「あなたもご無事のようで?」
「ええ。あなた方のおかげです。ありがとう」
 よかった、という笑顔がさわやかだった。彼の足元には、キリッとした目で私を見ている獣がいた。私と目が合うと、耳をピンと立て、鼻を小さく動かし、ふんふん鳴らした。
「僕はサクマです。足元にいるのはサフィア。……さて、戻ろう。早く地上にあがりたいし」
 サクマを先頭に、彼らが出てきた穴へ入っていく。ウォレスも続き、私も続いた。穴の入口で立っていた大柄な男性の前を通る時に、一言挨拶した。
「彼がサクマさんなら、あなたがアルスさんね。助けに来てくれてありがとうございます」
「……アルスでいい。地上まで結構昇るぞ」
「そうなの?頑張って昇ります」
「……」
 アルスは黙って私を穴へ促した。私はもう一度ありがとう、と小さく言って、ウォレスの背中を追った。





 ミスティ塔を昇りきり、ライファス遺跡を抜けて、風の谷エクセレビスへ帰ってきた。私……ウォレスはみんなを自宅に呼んだ。セルシアもサフィアも、みんな疲れていた。
 ドアを開け、明かりをつける。と、奥から母が出てきた。
「……!ウォレス……お帰り。お客様方も、どうぞ入って」
 驚いて一瞬動きが止まったが、すぐに笑顔で私たちを迎えてくれた。
「ごめんなさい、布団が足りないわ。みなさん疲れていらっしゃるのに……」
 困った様子の母に、サクマが答える。
「そんな、お気づかいありがとうございます。むしろ、おじゃまさせていただいているだけでも助かってます」
「そう?……狭いけど、ゆっくりしていってね」
 そう言って、母は自分の部屋へと入っていった。私たちはリビングで、母が敷いていった布団とソファに適当に散らばり、体を休めた。

 私は布団の上であおむけになり、ぼーっと天井を眺めていた。リリアを助けるために家を出たのに、今こうして家で休んでいる。不思議な感じがした。
「あの、休んでるところ申し訳ないんだけど」
 と、私と同じ様に布団の上であおむけになっていたサクマがむくりと起き上がり、ミスティアに問いかけた。
「ミスティアはなぜ、あの蜘蛛にさらわれてしまったの?」
「そうね……私もはっきりとはわからないんだけど、おそらくリリアの妹だからかな?」
「リリアはミスティアのお姉さん?」
「ええ。小さい頃は彼女も霧の療法士としての修業をしていたの。だけど……」
 彼女の表情が曇った。
「修業を終えて家に帰る途中、突然姿を消したの。少し離れたところで姉が何者かにさらわれる瞬間を見た、って方がいて。一瞬のことだったから何もできなかったみたい」
「……そうなんだ。なんでリリアが狙われたんだろう?」
「たまたま狙われてしまったのか、最初から狙われていたのか。真相はわからないけど。で、リリアが行方不明になったと谷中に広がってから、ウォレスが探しに旅立った。私は……あなたがこの谷を出ていった時びっくりしたのよ」
「……え?」
 私は飛び起きた。
「だって、今まで谷から出たことないあなたが、突然『私、探しに行ってきます!』なんて言って、セルシアと飛びだして行ったんだもの。あなたが見えなくなってから、ちょっとホッとしたのも事実。成長したんだなぁ……なんて」
 ふふ、とミスティアが軽く笑った。私は赤面していくのを感じた。首を左右に激しく振って「でも」と口を開いた。
「私は……まだ何も情報を掴めていません。それに、一人で魔物すら倒せていない。サクマさんや……アルスに助けられてばっかりで……」
「いいんだよ、それで」
 サクマが言った。
「仲間がいるから乗り越えられる。自分ひとりで乗り越えなきゃいけないこともあるけど、仲間がいる時はお互い頼ったらいいんじゃないかな?僕もサフィアに頼りっぱなしだしね」
 猫のように丸くなって眠っていたサフィアの耳がピクッと動いた。だが、それからは動かず、熟睡している様子。
「だから、僕たちと一緒にいる時は頼って。僕もウォレスの力借りることがあると思うから」
「サクマさん……」
 私はホッとした。男のくせに、ちょっと泣いた。

 一息置いて。庭に出ていたアルスが帰ってきた。静かに窓を閉めて、口を開いた。
「……丘にいた獣もあの蜘蛛女も、闇の力を秘めていた。あれは何者かに『注ぎ込まれた』ものだ」
「え……?」
「本物の闇一族はオッドアイ、つまり左右で眼の色が違う。丘の獣は頭が二つあったが、両眼とも赤色だった。蜘蛛女もまた、両眼とも紫だった」
「だけど、闇の力を放っていた……」
「正直、闇も悪もあんまり変わらない。見た目と言い、力と言い」
「見分けがつきにくいんですね」
「ただ……俺は魔力が弱い。だから、物理攻撃で切り抜ける。闇の一族は逆に魔力が強い。戦うなら魔法専攻だ」
「……なるほど。じゃぁ、あの黒い塊は闇の魔力、ということですか?」
「ああ。それと、闇は光の力に負ける。『光は闇を消す』からな」
「……へぇ」
 私は開いた口がふさがらなかった。
「で、『注ぎ込まれた』だけだと見た目は注ぎ込まれる前となんら変わらない。だが、一度注ぎ込まれたら二度と戻ることはない。死ぬ時は跡形もなく消滅する」
「…まさか、リリアも『注ぎ込まれた』と?」
 じっと聞いていたミスティアがソファから立ち上がった。
「リリアがさらわれたのはいつだ?」
「え?……えっと……10日ぐらい前だったかしら」
 アルスは黙ってうなずいた。
「……そうなると、丘の獣が現れたのは、リリアがさらわれてから3日後のことだ。今思うと、あれはリリアも一緒に現れていたかもな」
「え?!」
「俺も気付かれないように身を隠して様子をうかがっていたが、あれは魔女だった。黒い霧を放ったかと思うと、丘全体が黒い霧で覆われた。名の通り『ブラインド平原』にしちまったんだ。で、魔女は獣に港町を襲わせた」
「そんな……」
「霧の療法士として修業をしていたんだろ?注ぎ込まれたなら黒い霧も可能だろう」
 ミスティアはアルスを見つめていた。嘘だ、信じたくない。そんな目をしていた。
「で、でも、それはアルスのす……」
「推測って言いたいんだろ?」
 私は言葉を詰まらせた。私に向けられたアルスの眼差しが怖かったからだ。
「そうだ、これはあくまでも俺の推測。俺が見たのはリリアじゃないかもしれない。だが、さらわれたという事実がある限り、この推測は捨てるつもりはない」
 一瞬の静寂。ミスティアがゆっくりとソファに座った。うーん…と、サクマが頭を掻く。
「リリアは魔女に変えられちゃったかもしれない。アルスはそう言いたいんだよね?それが事実であろうと、探して助け出すのが僕たちのできることだよね?」
「助け出す、か……」
 ふっ、とアルスはそっぽを向いた。と、同時に突然眠っていたサフィアが耳をピンと立てて頭を上げた。視線はアルスの方向だ。
『きゅ……』
 と、少し鳴きながら起き上がり、アルスの方へ向かった。
「サフィア?」
 サクマもミスティアも私も、みんなサフィアを見た。アルスの足元で止まり、じっと外を睨みつけていた。アルスはちらっとサフィアを見、再び外を見た。
「……なんかいるな」
 そっと窓を開けると、サフィアが飛び出していった。
「あ」
 みんなで声を漏らす。サフィアを追いかける形でアルスが部屋を出ていく。闇夜。私たちは彼らの帰りをしばし待った。

「あ、サフィア、おかえり」
 先に戻ってきたのはサフィアだった。走った後なので、少し息が荒い。
「道端でぐったりしてたぞ」
 と、アルスが連れ帰ってきたのは、一匹の獣だった。ふさふさの毛並み、だけどドラゴンの一種のようだった。 というのも、その獣にはいわゆる竜の翼があったからだ。顔つきはちょっとサフィアに似ている。この獣って……
「召喚獣……でしょうか?」
「かもしれないな。サフィアがやたら興奮してた。目立った外傷は無いみたいだが……」
「私に診せてくれる?」
 ミスティアが立ちあがり、アルスのもとへ寄った。そして、ぐったりしている獣をそっと引き取った。
「……息はある。だが、かなり弱いぞ」
「そうね……。でも、助けられると思うわ」
 と言って、そっと目を閉じ、祈った。すると、淡い水色の霧がそっと現れ、獣を包み込んだ。これが霧の療法。
「この霧が消えるころには、きっと良くなってるはず」
 そっと獣をソファへ寝かせた。サフィアがそばへ行き、そっと座り、様子を見ていた。そして、私たちを見てうなずいた。様子見てるから休んで、と言っているような気がした。
「このコはサフィアに任せて、休もうか」
 サクマの一声で、私たちも再び横になった。そして、一瞬で眠りについた……。
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