Sky Tradition

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小説


ミスティ塔の主

2012.05.21  *Edit 

 古びた塔は『ミスティ塔』と言うらしい。
 僕……サクマは階段の途中にあった石板を見ていた。僕の前には、同じく階段の途中にあったたいまつを持ち歩いているアルスがいる。距離はさほど離れていない。僕の後ろにはサフィアがゆっくりついてきている。
 しばらくすると、階段が無くなった。どうやらフロアに出たようだ。虫が石の床を這う音、たいまつの火の音、時折落ちてくる滴の音、そして僕たちの足音……。
 後ろにいたサフィアが素早く僕を抜き、アルスの前に立った。耳をぴんと立てて音を聴いている。僕はアルスの隣で足をとめ、彼を見た。彼は天井を見ている。
「何か気になりますか?」
「ん、ああ。これ、ウォレスを連れて行った糸だよな?」
 と、たいまつを掲げる。白いものが天井にたくさんはりついている。まるで蜘蛛の糸だ。その時、たいまつの火が白いものに引火してしまった。火が天井を一気に駆け抜けていく。
「ちょっと、アルスさん!」
「……わざとだ。こうやって燃やしておけば、向こうからくるだろ」
 ちょっと……なんてこった。アルスはたいまつを左手に持ち替えて、右手から爪……ナックルを出した。……これ、しのばせてるいのかな?急に出したから少し驚いた。
「来るぞ。構えろ」
 僕は長剣を取り出し、構えた。





「……レス!ウォレス!」
 私……ミスティアは、目の前でぐるぐる巻きにされているウォレスに何度も声をかけていた。
「……んん」
 あ、やっと起きた……。ちょっとほっとした。だんだん覚醒してきたウォレス。身動きが全く取れず、「えっ?えっ?」と焦り出した。
「な、なに、これ……」
「スパイガルの蜘蛛の糸よ。私もそうだけど、絡まれたら動けなくなるの」
「……あ……ミスティアさん!」
 今頃気が付かれた私。思わずため息をついてしまった。
「……あなたはどうしてここにいるの?なんで捕らわれてしまったの?」
「わ……私は……サクマさんとアルスさんと一緒にリリアを探して旅をしていました。故郷のエクセレビスへ戻った時に、あなたが何者かにさらわれたことを聞きまして。助けに向かったものの……こんな目に……」
「そう。助けに来てくれたんだね。でも、ウォレスはつかまってしまった。……その、サクマさんとアルスさんは?」
「……わかりません。一瞬の出来事だったので。無事だといいのですが……」
 その時、ガサッ、と何かが動く音がした。
「……!」
『お目覚めかい、風使いのおチビちゃん』
「……ち、チビっていうな!」
 少し顔を赤らめて反論するウォレス。蜘蛛女……スパイガルも不敵な笑みを浮かべる。
『本当はあんたを捕まえるつもりじゃなかったのにね。不運だったな』
 ヒッヒッヒ……と笑いながら蜘蛛は背を向けた。私もウォレスも奴を見つめていた。
「……私は捕まり損ですか…」
 落ち込むウォレス。……本当はウォレスを捕まえるつもりじゃなかった。じゃあ、誰を捕まえるつもりだったんだろう?
 ウォレスと一緒にいたサクマさんかアルスさん、ということになるけど。私はその二人を知らない。一体どんな人たちなんだろう?
『……ん?追いかけてきたのかねぇ。獲物が自らやってきたか。しめしめ』
 と呟いて蜘蛛は去って行った。獲物……?
「サクマさんたちかもしれない!」
 落ち込んでいたウォレスがもがき始めた。動けば動くほど、糸は体を締めつけていく。
「ウォレス、こうなったら何もできないのよ。……サクマさんとアルスさんに委ねるしかないの」
「……もう!……くっ……そう……」
 相当悔しいのか、俯きそのまま動かなくなった。いや、わずかながら体が震えていた……。





 炎は天井を覆い尽くし、塔内を明るくしていた。燃える音に混じって、カサカサと何かが来る音が、だんだん大きくなっていく。
 奴が来た。俺……アルスはたいまつを左手に持ち替え、ナックルを出して構えた。隣にいたサクマも続いて長剣を取り出した。
 燃えるものが無くなってきたのか、炎の勢いは衰えていった。同時に白いものがこちらをめがけて飛んできた。俺たちはすかさずかわし、態勢を立て直す。かわされた白いものは、壁にべったりとくっついた。
「姿を現したらどうだ」
 俺は挑発した。と、奥から奴が出てきた。8本の鋭い脚、赤と黒の縞模様の丸い腹部、毒がコーティングされていそうな牙……。
「……次は蜘蛛ってか」
『よくも燃やしてくれたねぇ。お前たちもあの娘とチビのようにしてやるよ!』
 腹の先から勢いよく白いものを俺に飛ばしてきた。再びかわし奴の真下に来た。ジャンプで届くかどうか微妙な距離だが、俺はナックルを突き上げた。
『無駄さ!』
 言う通り、腹には届かなかった。が、脚に届きそうだったので横に振りまわした。読まれていたのか、脚は攻撃をあっさりかわし……
「……な!」
 目の前に白いものが出てきてもろにくらった。とっさに左手で受け止めたがそのまま地面に叩きつけられた。
「アルスさん!」
 サクマが叫ぶ。俺は背中から落ちた。左手と体は白いものがくっつき動かせない。右手はまだ自由がきいていた。だが、起き上がれない。サクマが駆けよる。
「うおおおお!」
「待て!」
「!」
 長剣が白いものに当たりかけたが、うまく空を切った。
「なんで止めるんですか?!」
「この糸、くっついたら離れない。切ろうとしたらおそらく剣にくっついて使い物にならなくなる」
「でもこのままだとアルスさんが……!」
 また白い……糸が飛んできた。サクマはそれをあろうことか剣で受け止めてしまった。
「あぁっ!」
「お前……!くっそ!」
 俺は起き上がろうともがいた。糸がくっついているのは上半身なので、脚は動かせる。ただ、どうにもなっていない……。むしろ、糸がどんどん締めつけてくる。……息苦しくなってきた。糸が首元に……
「か……は……」
 声が出ない。
『動けば動くほど、締めつけられていく。さて、窒息死するまでどれくらいかかるかねぇ。ヒヒヒヒヒ……』
 俺の真上に蜘蛛がいた。顔面に糸が飛んできたら終わりだ。俺は腹の先をじっと見つめていた。後ろ脚2本で器用に糸をこねている。その糸は白くはなかった。……黒い。いや、紫色か?これはまずい。
『あんたは生かして連れていくよ、エルフの生き残り!』
「なっ!」
 黒っぽい糸はサクマに向けて飛ばされた。サクマは剣を動かそうとする。案の定、動かない……が……
「やられるかよ!!」
『きゅおおおおお!』
 別の場所から雷が飛んできた。剣にあたり、糸が切れた……。光る剣を下から上へスイングし、若干後ろへ下がる。自由になったサクマは、構え直して黒っぽい糸を打ち返した。
「うっりゃあ!」
 黒っぽい糸は蜘蛛に向かって飛んで行った。こちらに飛んできた時よりも格段と速かった。サフィアが再び雷を放った。黒っぽい糸は雷を帯びて蜘蛛に当たった。
『ああああああああああああ!!!』
 散々飛ばしていた白い糸は蜘蛛の消滅と共に消え、俺は自由になった。咳き込んだが、叩きつけられたわりには特に痛みもなく、動いても大丈夫だった。
「大丈夫ですか?」
 サクマが俺を起こしてくれた。サフィアも俺の脚元へ駆け寄る。
 ……ふう。落ち着いた。
「ありがとな」
「怪我、無さそうですね……」
「ああ。頑丈だからな」
 ホッとした様子のサクマ。サフィアもぶるぶると体を震わせた。
「ミスティアとウォレスを探そう」
「そうですね。行きましょう」
 俺たちは立ち上がり、蜘蛛が出てきた方向を見た。先へ続いていそうな穴があいている。サクマと顔を合わせ、互いに頷き、穴へ向かった。
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