Sky Tradition

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小説


運命の始まり

2010.01.03  *Edit 

 夜。雨の中、僕……サクマは震えながら歩いていた。
 手には片手で扱える長剣、僕の足元には雷の召喚獣サフィア。歩いてはキリッとした眼で僕の様子を見ている。目が合い、僕は微笑んだ。……大丈夫だよ。
歩くことしばし、明かりを灯す場所が見えてきた。そこはパブだった。明け方まで開いているようだ。僕らは足早にパブに近づき、木目調のドアをゆっくり開けた。

「いらっしゃい」
 パブのマスターと挨拶を交わした。客はいない。……いや、店の奥に一人、カウンター席に座っている。壁にはギターが立てかけられていた。
「雨の中、傘も差さずに歩いていたのかい?」
 カウンター席に座っている人に声をかけられた。サフィアはじっと見つめていた。その人はハットをかぶりなおし、僕を隣に座るよう促した。サフィアは体を震わせて水を飛ばし、僕の足元まで寄って伏せをした。
「マスター、タオルを」
 すみません……。僕は長剣をそばに立て掛けてタオルをもらい、軽く頭を拭いた。その様子をじっと見つめる……ハットの人。
「……君は、ここの民じゃないね」
 どきっとして、思わずハットの人を見た。しばし見つめあう。……なんだろ、この沈黙。
「自己紹介、忘れていたね。私はガイア。世界のパブを拠点に語り歩いているんだ。その国の歴史や言い伝えなんかをね」
 へぇ……。……あ、自己紹介だった。
「僕は……サクマと言います。あの……確かに、僕はここの民ではな……」
「君がどこの民かは、伏せておいたほうがいいよ」

 ……止められた。そう、僕は……エルフ族の生き残り。突然行われた「エルフ狩り」に遭い、僕は里を離れてきた。そして、ここ地の国アースの城下町ダーラムに逃げ込んできた。僕がエルフであることは伏せておかなければならない。どこにエルフハンターがいるかわからないから。
「今日はここで休みなさい。いいよね、マスター?」
 マスターは黙ってうなずいた。……ありがとうございます。
「僕は明日、ウォレスという風使いとここで会う約束をしているんだ。だから、朝ちょっとだけ騒がしいかもしれない」
「あ……それは……大丈夫です」
 ごめんね、と微笑み、座っていた席を僕に譲ってくれた。急に眠気が襲ってきた。カウンター席に腰かけた瞬間、意識が飛んだ。





 夜が明けて。雨は寝ている間に止んだようだ。僕はうーんと伸びをして目をこすった。
「……いって…」
 変な態勢で寝ていたみたいだ。体がバキバキ音を立てた。
「おはよう」
 マスターが片付けをしながら、コーヒーを淹れてくれた。
「ありがとうございます。……ガイアさんはどこへ?」
「彼なら連れと一緒にさっき出て行ったよ。どこへ向かったかわからないけど」
「そうですか……」
 足元でサフィアが伸びをした。
「おはよう、サフィア」
 僕をじっと見て、くぅ、と小さく鳴いた。
 コーヒーを飲みほし、マスターに挨拶をしてパブを出た。これからどこに向かおうか……。
 僕には、探さなければいけない人がいる。……妹のカシェだ。別々の方向に逃げた。固まっていては共倒れになるから。互いに無事ならいいが、仮にカシェが囚われていたら……助けに行かなければ。一刻も早く。

 地の国アースの城下町・ダーラム。いろいろなお店が軒を並べる大通りは人があふれている。腰に長剣を携え、この大通りをゆっくり歩いていた。サフィアは僕より少し先に行き、人々の活気に驚きつつも歩いていた。
 小さな路地に差しかかった時、僕はガイアを見た。誰かと一緒に歩いている。あの人がウォレス?その先には、黒い霧で覆われた丘。なにかあるのだろうか。
「サフィア、こっち」
 先に行っていたサフィアを呼び、小さな路地へと入った。瞬間、静寂。サフィアの足音がトタトタ聞こえる。僕の足音もはっきり聞こえていた。
 僕は後を追った。





「ここに奴がいると?」
 雷の賢者ガイアの傍らで、ある青年が言った。ガイアはゆっくりうなずく。
「リリアの手下は闇の魔法を使う。風魔法では少し厳しいかもしれない。ガイアさん、手を貸してください」
「貸したいのは山々なんだが……生憎私は戦う能力というか、武器を持っていない。『語り屋』だからねぇ……」
「……そうですか」
「私と同じ雷の魔法を使う者なら……近くにいるだろう」
「……え?」
 と、僕を見た。
「あ……その、ガイアさんが見えたからついてきちゃったわけで……」
 焦る僕にガイアが微笑む。
「で……あの、隣にいらっしゃるのが……ウォレスさん?」
「ええ。あなたは?」
「サクマです。僕の足元にいるのがサフィア」
 ウォレスはサフィアを見た。キリッとした眼で見上げた。
「僕が雷の魔法が使えることを、どこで……?」
「サフィアさ。この子は雷の召喚獣だからね」
 さすが、語り歩いているだけあって知っている。
「サクマさん、申し訳ないんですが力を貸してくれませんか?リリアの手下がこの丘に潜んでいるんです。そいつにリリアの居場所を聞き出すつもりです」
「リリアって……誰?」
「闇の魔法を使う魔女です。私も彼女も風の谷エクセレビスの民なんです。何者かにさらわれたと聞き、彼女を助けるために谷を出てきました。彼女は言われるがままに魔物を生み出し、街の住民を襲うのではないかとガイアさんが……」
「事実、この丘……ブラインド平原唯一の丘に巨大な魔物が目撃された。そして、港町オーラルを襲っている」
「え……」
「ダーラムが襲われたらひとたまりもない。ウォレスにそういう話をしたら、リリアの手下かもしれない、と言ってここまで来たんだ。そして、今に至る」
「街が襲われる前に、こちらで食い止めたい。同時に、リリアの居場所を聞き出す。だから……」
「……わかりました、手伝います。お役に立てるといいですが」
「ありがとうございます。では、さっそく向かいましょう。……セルシア!」
 ウォレスの声で、一羽の鳥が舞い降りてきた。鷹ぐらいの大きさで、真白な身体。セルシアと呼ばれた鳥はどこかに停まることなく再び上昇し、先にブラインド平原へと飛び立った。ウォレスはそれを見て黒い霧の中へと歩き出した。
「……行こうか、サフィア」
 サフィアが先に歩きだし、僕は後に続いた。
 ガイアは、彼等の姿が見えなくなると、ふと身を翻し、小さな路地へと引き返した。
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