Sky Tradition

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白牙駿華(Shunka-h)が書く小説を中心に掲載しているブログです。

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このブログについて

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ここは、白牙駿華オリジナル小説を掲載したブログです。


とはいえほぼ何もない状態ですが、
これからぼちぼちUPしていく予定です。

以下からクリックして閲覧ください。


小説
Sky Tradition~天空伝説~
第1弾「リリアの闇」2013.1.13UP
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リリアの闇

小説


大地と天空、二つの世界がひとつの星に存在する……
「リスト界」と呼ばれるこの星で、異変が起き始めていた。
古代の魔法を求めて突然行われた「エルフ狩り」。
里を離れ、地の国アースに逃げ込んだ青年、サクマ。
生き別れた妹と再び会うため、雷の召喚獣サフィアと共に旅を始める。

雷の賢者・ガイアとの偶然の出会いから、彼等の運命は
天空界の運命を左右する壮大なものへと変わっていく……

風使い・ウォレスが追う「リリア」とは何者なのか。
そして、「エルフ狩り」の目的とは……



第一章
運命の始まり
悪の番人
手掛かりを求めて

第二章
新たな動き
ミスティ塔の主
魔女リリア 2013.1.13UP
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魔女リリア

小説


 遠くで悲痛な叫びを聞いた。私……ミスティアは体に巻きついた白いもの……糸が徐々に緩んでいくのを感じた。いや、緩んでいるのではなく、消滅していっている。
「糸が……消えていく?」
 やがて糸は完全に消えた。私もウォレスも自由になった。
 誰かが蜘蛛……スパイガルを倒してくれたんだよね、きっと。だから自由になれた……。ウォレスも身動きが取れるようになってホッとしている様子。
 と、蜘蛛が出入りしていた穴から物音がした。ウォレスがすぐさま反応し、構える。バタバタと、鳥が羽ばたく音に聴こえた。
「セルシア?」
 現れたのは一羽の鳥だった。まさしく、ウォレスの愛鳥だった。真白の、美しい鳥は、ウォレスの頭上を飛び、旋回して彼の肩、というか背中あたりにとまった。……結構大きくなったな、セルシア。
 嬉しいのか、ウォレスの頬をスリスリしている。
「僕は大丈夫だよ。セルシアも無事でよかった」
 彼は笑顔だった。なんだか懐かしいな……。
「ウォレスー、いるのー?」
 次に現れたのは、二人の男性……。
「無事みたいだね。よかった。あ、もしかして隣の方は……?」
「……あ、はい、彼女がミスティアさんです」
「あなたもご無事のようで?」
「ええ。あなた方のおかげです。ありがとう」
 よかった、という笑顔がさわやかだった。彼の足元には、キリッとした目で私を見ている獣がいた。私と目が合うと、耳をピンと立て、鼻を小さく動かし、ふんふん鳴らした。
「僕はサクマです。足元にいるのはサフィア。……さて、戻ろう。早く地上にあがりたいし」
 サクマを先頭に、彼らが出てきた穴へ入っていく。ウォレスも続き、私も続いた。穴の入口で立っていた大柄な男性の前を通る時に、一言挨拶した。
「彼がサクマさんなら、あなたがアルスさんね。助けに来てくれてありがとうございます」
「……アルスでいい。地上まで結構昇るぞ」
「そうなの?頑張って昇ります」
「……」
 アルスは黙って私を穴へ促した。私はもう一度ありがとう、と小さく言って、ウォレスの背中を追った。





 ミスティ塔を昇りきり、ライファス遺跡を抜けて、風の谷エクセレビスへ帰ってきた。私……ウォレスはみんなを自宅に呼んだ。セルシアもサフィアも、みんな疲れていた。
 ドアを開け、明かりをつける。と、奥から母が出てきた。
「……!ウォレス……お帰り。お客様方も、どうぞ入って」
 驚いて一瞬動きが止まったが、すぐに笑顔で私たちを迎えてくれた。
「ごめんなさい、布団が足りないわ。みなさん疲れていらっしゃるのに……」
 困った様子の母に、サクマが答える。
「そんな、お気づかいありがとうございます。むしろ、おじゃまさせていただいているだけでも助かってます」
「そう?……狭いけど、ゆっくりしていってね」
 そう言って、母は自分の部屋へと入っていった。私たちはリビングで、母が敷いていった布団とソファに適当に散らばり、体を休めた。

 私は布団の上であおむけになり、ぼーっと天井を眺めていた。リリアを助けるために家を出たのに、今こうして家で休んでいる。不思議な感じがした。
「あの、休んでるところ申し訳ないんだけど」
 と、私と同じ様に布団の上であおむけになっていたサクマがむくりと起き上がり、ミスティアに問いかけた。
「ミスティアはなぜ、あの蜘蛛にさらわれてしまったの?」
「そうね……私もはっきりとはわからないんだけど、おそらくリリアの妹だからかな?」
「リリアはミスティアのお姉さん?」
「ええ。小さい頃は彼女も霧の療法士としての修業をしていたの。だけど……」
 彼女の表情が曇った。
「修業を終えて家に帰る途中、突然姿を消したの。少し離れたところで姉が何者かにさらわれる瞬間を見た、って方がいて。一瞬のことだったから何もできなかったみたい」
「……そうなんだ。なんでリリアが狙われたんだろう?」
「たまたま狙われてしまったのか、最初から狙われていたのか。真相はわからないけど。で、リリアが行方不明になったと谷中に広がってから、ウォレスが探しに旅立った。私は……あなたがこの谷を出ていった時びっくりしたのよ」
「……え?」
 私は飛び起きた。
「だって、今まで谷から出たことないあなたが、突然『私、探しに行ってきます!』なんて言って、セルシアと飛びだして行ったんだもの。あなたが見えなくなってから、ちょっとホッとしたのも事実。成長したんだなぁ……なんて」
 ふふ、とミスティアが軽く笑った。私は赤面していくのを感じた。首を左右に激しく振って「でも」と口を開いた。
「私は……まだ何も情報を掴めていません。それに、一人で魔物すら倒せていない。サクマさんや……アルスに助けられてばっかりで……」
「いいんだよ、それで」
 サクマが言った。
「仲間がいるから乗り越えられる。自分ひとりで乗り越えなきゃいけないこともあるけど、仲間がいる時はお互い頼ったらいいんじゃないかな?僕もサフィアに頼りっぱなしだしね」
 猫のように丸くなって眠っていたサフィアの耳がピクッと動いた。だが、それからは動かず、熟睡している様子。
「だから、僕たちと一緒にいる時は頼って。僕もウォレスの力借りることがあると思うから」
「サクマさん……」
 私はホッとした。男のくせに、ちょっと泣いた。

 一息置いて。庭に出ていたアルスが帰ってきた。静かに窓を閉めて、口を開いた。
「……丘にいた獣もあの蜘蛛女も、闇の力を秘めていた。あれは何者かに『注ぎ込まれた』ものだ」
「え……?」
「本物の闇一族はオッドアイ、つまり左右で眼の色が違う。丘の獣は頭が二つあったが、両眼とも赤色だった。蜘蛛女もまた、両眼とも紫だった」
「だけど、闇の力を放っていた……」
「正直、闇も悪もあんまり変わらない。見た目と言い、力と言い」
「見分けがつきにくいんですね」
「ただ……俺は魔力が弱い。だから、物理攻撃で切り抜ける。闇の一族は逆に魔力が強い。戦うなら魔法専攻だ」
「……なるほど。じゃぁ、あの黒い塊は闇の魔力、ということですか?」
「ああ。それと、闇は光の力に負ける。『光は闇を消す』からな」
「……へぇ」
 私は開いた口がふさがらなかった。
「で、『注ぎ込まれた』だけだと見た目は注ぎ込まれる前となんら変わらない。だが、一度注ぎ込まれたら二度と戻ることはない。死ぬ時は跡形もなく消滅する」
「…まさか、リリアも『注ぎ込まれた』と?」
 じっと聞いていたミスティアがソファから立ち上がった。
「リリアがさらわれたのはいつだ?」
「え?……えっと……10日ぐらい前だったかしら」
 アルスは黙ってうなずいた。
「……そうなると、丘の獣が現れたのは、リリアがさらわれてから3日後のことだ。今思うと、あれはリリアも一緒に現れていたかもな」
「え?!」
「俺も気付かれないように身を隠して様子をうかがっていたが、あれは魔女だった。黒い霧を放ったかと思うと、丘全体が黒い霧で覆われた。名の通り『ブラインド平原』にしちまったんだ。で、魔女は獣に港町を襲わせた」
「そんな……」
「霧の療法士として修業をしていたんだろ?注ぎ込まれたなら黒い霧も可能だろう」
 ミスティアはアルスを見つめていた。嘘だ、信じたくない。そんな目をしていた。
「で、でも、それはアルスのす……」
「推測って言いたいんだろ?」
 私は言葉を詰まらせた。私に向けられたアルスの眼差しが怖かったからだ。
「そうだ、これはあくまでも俺の推測。俺が見たのはリリアじゃないかもしれない。だが、さらわれたという事実がある限り、この推測は捨てるつもりはない」
 一瞬の静寂。ミスティアがゆっくりとソファに座った。うーん…と、サクマが頭を掻く。
「リリアは魔女に変えられちゃったかもしれない。アルスはそう言いたいんだよね?それが事実であろうと、探して助け出すのが僕たちのできることだよね?」
「助け出す、か……」
 ふっ、とアルスはそっぽを向いた。と、同時に突然眠っていたサフィアが耳をピンと立てて頭を上げた。視線はアルスの方向だ。
『きゅ……』
 と、少し鳴きながら起き上がり、アルスの方へ向かった。
「サフィア?」
 サクマもミスティアも私も、みんなサフィアを見た。アルスの足元で止まり、じっと外を睨みつけていた。アルスはちらっとサフィアを見、再び外を見た。
「……なんかいるな」
 そっと窓を開けると、サフィアが飛び出していった。
「あ」
 みんなで声を漏らす。サフィアを追いかける形でアルスが部屋を出ていく。闇夜。私たちは彼らの帰りをしばし待った。

「あ、サフィア、おかえり」
 先に戻ってきたのはサフィアだった。走った後なので、少し息が荒い。
「道端でぐったりしてたぞ」
 と、アルスが連れ帰ってきたのは、一匹の獣だった。ふさふさの毛並み、だけどドラゴンの一種のようだった。 というのも、その獣にはいわゆる竜の翼があったからだ。顔つきはちょっとサフィアに似ている。この獣って……
「召喚獣……でしょうか?」
「かもしれないな。サフィアがやたら興奮してた。目立った外傷は無いみたいだが……」
「私に診せてくれる?」
 ミスティアが立ちあがり、アルスのもとへ寄った。そして、ぐったりしている獣をそっと引き取った。
「……息はある。だが、かなり弱いぞ」
「そうね……。でも、助けられると思うわ」
 と言って、そっと目を閉じ、祈った。すると、淡い水色の霧がそっと現れ、獣を包み込んだ。これが霧の療法。
「この霧が消えるころには、きっと良くなってるはず」
 そっと獣をソファへ寝かせた。サフィアがそばへ行き、そっと座り、様子を見ていた。そして、私たちを見てうなずいた。様子見てるから休んで、と言っているような気がした。
「このコはサフィアに任せて、休もうか」
 サクマの一声で、私たちも再び横になった。そして、一瞬で眠りについた……。

ミスティ塔の主

小説


 古びた塔は『ミスティ塔』と言うらしい。
 僕……サクマは階段の途中にあった石板を見ていた。僕の前には、同じく階段の途中にあったたいまつを持ち歩いているアルスがいる。距離はさほど離れていない。僕の後ろにはサフィアがゆっくりついてきている。
 しばらくすると、階段が無くなった。どうやらフロアに出たようだ。虫が石の床を這う音、たいまつの火の音、時折落ちてくる滴の音、そして僕たちの足音……。
 後ろにいたサフィアが素早く僕を抜き、アルスの前に立った。耳をぴんと立てて音を聴いている。僕はアルスの隣で足をとめ、彼を見た。彼は天井を見ている。
「何か気になりますか?」
「ん、ああ。これ、ウォレスを連れて行った糸だよな?」
 と、たいまつを掲げる。白いものが天井にたくさんはりついている。まるで蜘蛛の糸だ。その時、たいまつの火が白いものに引火してしまった。火が天井を一気に駆け抜けていく。
「ちょっと、アルスさん!」
「……わざとだ。こうやって燃やしておけば、向こうからくるだろ」
 ちょっと……なんてこった。アルスはたいまつを左手に持ち替えて、右手から爪……ナックルを出した。……これ、しのばせてるいのかな?急に出したから少し驚いた。
「来るぞ。構えろ」
 僕は長剣を取り出し、構えた。





「……レス!ウォレス!」
 私……ミスティアは、目の前でぐるぐる巻きにされているウォレスに何度も声をかけていた。
「……んん」
 あ、やっと起きた……。ちょっとほっとした。だんだん覚醒してきたウォレス。身動きが全く取れず、「えっ?えっ?」と焦り出した。
「な、なに、これ……」
「スパイガルの蜘蛛の糸よ。私もそうだけど、絡まれたら動けなくなるの」
「……あ……ミスティアさん!」
 今頃気が付かれた私。思わずため息をついてしまった。
「……あなたはどうしてここにいるの?なんで捕らわれてしまったの?」
「わ……私は……サクマさんとアルスさんと一緒にリリアを探して旅をしていました。故郷のエクセレビスへ戻った時に、あなたが何者かにさらわれたことを聞きまして。助けに向かったものの……こんな目に……」
「そう。助けに来てくれたんだね。でも、ウォレスはつかまってしまった。……その、サクマさんとアルスさんは?」
「……わかりません。一瞬の出来事だったので。無事だといいのですが……」
 その時、ガサッ、と何かが動く音がした。
「……!」
『お目覚めかい、風使いのおチビちゃん』
「……ち、チビっていうな!」
 少し顔を赤らめて反論するウォレス。蜘蛛女……スパイガルも不敵な笑みを浮かべる。
『本当はあんたを捕まえるつもりじゃなかったのにね。不運だったな』
 ヒッヒッヒ……と笑いながら蜘蛛は背を向けた。私もウォレスも奴を見つめていた。
「……私は捕まり損ですか…」
 落ち込むウォレス。……本当はウォレスを捕まえるつもりじゃなかった。じゃあ、誰を捕まえるつもりだったんだろう?
 ウォレスと一緒にいたサクマさんかアルスさん、ということになるけど。私はその二人を知らない。一体どんな人たちなんだろう?
『……ん?追いかけてきたのかねぇ。獲物が自らやってきたか。しめしめ』
 と呟いて蜘蛛は去って行った。獲物……?
「サクマさんたちかもしれない!」
 落ち込んでいたウォレスがもがき始めた。動けば動くほど、糸は体を締めつけていく。
「ウォレス、こうなったら何もできないのよ。……サクマさんとアルスさんに委ねるしかないの」
「……もう!……くっ……そう……」
 相当悔しいのか、俯きそのまま動かなくなった。いや、わずかながら体が震えていた……。





 炎は天井を覆い尽くし、塔内を明るくしていた。燃える音に混じって、カサカサと何かが来る音が、だんだん大きくなっていく。
 奴が来た。俺……アルスはたいまつを左手に持ち替え、ナックルを出して構えた。隣にいたサクマも続いて長剣を取り出した。
 燃えるものが無くなってきたのか、炎の勢いは衰えていった。同時に白いものがこちらをめがけて飛んできた。俺たちはすかさずかわし、態勢を立て直す。かわされた白いものは、壁にべったりとくっついた。
「姿を現したらどうだ」
 俺は挑発した。と、奥から奴が出てきた。8本の鋭い脚、赤と黒の縞模様の丸い腹部、毒がコーティングされていそうな牙……。
「……次は蜘蛛ってか」
『よくも燃やしてくれたねぇ。お前たちもあの娘とチビのようにしてやるよ!』
 腹の先から勢いよく白いものを俺に飛ばしてきた。再びかわし奴の真下に来た。ジャンプで届くかどうか微妙な距離だが、俺はナックルを突き上げた。
『無駄さ!』
 言う通り、腹には届かなかった。が、脚に届きそうだったので横に振りまわした。読まれていたのか、脚は攻撃をあっさりかわし……
「……な!」
 目の前に白いものが出てきてもろにくらった。とっさに左手で受け止めたがそのまま地面に叩きつけられた。
「アルスさん!」
 サクマが叫ぶ。俺は背中から落ちた。左手と体は白いものがくっつき動かせない。右手はまだ自由がきいていた。だが、起き上がれない。サクマが駆けよる。
「うおおおお!」
「待て!」
「!」
 長剣が白いものに当たりかけたが、うまく空を切った。
「なんで止めるんですか?!」
「この糸、くっついたら離れない。切ろうとしたらおそらく剣にくっついて使い物にならなくなる」
「でもこのままだとアルスさんが……!」
 また白い……糸が飛んできた。サクマはそれをあろうことか剣で受け止めてしまった。
「あぁっ!」
「お前……!くっそ!」
 俺は起き上がろうともがいた。糸がくっついているのは上半身なので、脚は動かせる。ただ、どうにもなっていない……。むしろ、糸がどんどん締めつけてくる。……息苦しくなってきた。糸が首元に……
「か……は……」
 声が出ない。
『動けば動くほど、締めつけられていく。さて、窒息死するまでどれくらいかかるかねぇ。ヒヒヒヒヒ……』
 俺の真上に蜘蛛がいた。顔面に糸が飛んできたら終わりだ。俺は腹の先をじっと見つめていた。後ろ脚2本で器用に糸をこねている。その糸は白くはなかった。……黒い。いや、紫色か?これはまずい。
『あんたは生かして連れていくよ、エルフの生き残り!』
「なっ!」
 黒っぽい糸はサクマに向けて飛ばされた。サクマは剣を動かそうとする。案の定、動かない……が……
「やられるかよ!!」
『きゅおおおおお!』
 別の場所から雷が飛んできた。剣にあたり、糸が切れた……。光る剣を下から上へスイングし、若干後ろへ下がる。自由になったサクマは、構え直して黒っぽい糸を打ち返した。
「うっりゃあ!」
 黒っぽい糸は蜘蛛に向かって飛んで行った。こちらに飛んできた時よりも格段と速かった。サフィアが再び雷を放った。黒っぽい糸は雷を帯びて蜘蛛に当たった。
『ああああああああああああ!!!』
 散々飛ばしていた白い糸は蜘蛛の消滅と共に消え、俺は自由になった。咳き込んだが、叩きつけられたわりには特に痛みもなく、動いても大丈夫だった。
「大丈夫ですか?」
 サクマが俺を起こしてくれた。サフィアも俺の脚元へ駆け寄る。
 ……ふう。落ち着いた。
「ありがとな」
「怪我、無さそうですね……」
「ああ。頑丈だからな」
 ホッとした様子のサクマ。サフィアもぶるぶると体を震わせた。
「ミスティアとウォレスを探そう」
「そうですね。行きましょう」
 俺たちは立ち上がり、蜘蛛が出てきた方向を見た。先へ続いていそうな穴があいている。サクマと顔を合わせ、互いに頷き、穴へ向かった。
  • 08:31 
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新たな動き

小説


 ……ここはどこだろう?身動きが取れない。……どういうことだろう?
 無理やり動いてみると、ロープがこすれる音がギュッ、と小さく鳴った。しかし、動けば動くほどさらに動けなくなる。まるで、蜘蛛の糸のよう……。
 ……蜘蛛?
『おやおや、お目覚めかい』
 はっとして、声の方を向いた。赤と黒の縞模様の身体に、鋭く長い脚が8本。顔は女性の様な顔立ちだが、触角があり、牙もある。
「なんで私をこんな状態にしたの?」
『フフフ……お前がリリア様の妹だそうじゃないか』
「……リリア?!生きているの?」
『でなきゃ私は今、お前と話なんかしてないよ』
「それって……あなたはリリアの魔法によって生まれた、ということ?」
『そういうことさ』
「……で、私をどうするの?」
『フフフ……それはリリア様の元へ連れて行くだけさ。私の使命は、それだけ』
 でも、と一呼吸置いた。一番後ろの脚をくるくる回し始めた。白いものが見える。どうやら蜘蛛の糸を巻いているようだが、何をする気だろう?





 風の国ウィンス。ここは私……ウォレスの故郷である風の谷エクセレビスが主の町となっている。私はサクマとアルスを連れて、この故郷へ帰ってきた。
 ガイアから得た話によると、故郷の近くにあるライファス遺跡に行くと、リリアに関する情報が得られるかもしれない、とのこと。
 遺跡へ行くには、谷を抜けなければならない。というわけで今、エクセレビスの町を歩いていた。正しくは、谷を通過している、だが。
「風が心地よいねー」
 伸びをしながら歩くサクマ。アルスも遠くに見える風景を見ながら歩いていた。
 途中、見なれた家の前を通過した。私の家だ。
「うぉーれーすー!!」
 遠くから一人の民が走ってきた。
「……どうしました?」
 はあ、はあ、と息を整えつつ、民は衝撃的な事を口にした。
「ミスティアが……行方不明に……」

 ミスティア。彼女は「霧の療法士」と言われていて、「霧」を使って人々の外傷を治してきた。私も幼い頃、遊んでいて怪我をした時によく治してくれた。
「その……ミスティアさんがいなくなったのはいつからですか?」
 サクマが代わりに聞いた。民は今朝からいないと返した。さらに、彼女の家が荒らされていたらしい。
「これは拉致されたとしか言えないな」
 アルスが口を開いた。何処へ行ったのかはわからないが、もしかしたらライファス遺跡と何か関係があるのかもしれない。
「サクマさん、アルスさん、遺跡へ急ぎましょう」
「奴の手下がさらった、という可能性が濃厚だしな」
「よし、急ごう。サフィア、行くよ」
 私達は遺跡へ急いだ。





『ん、何か近づいてくるね。お前を助けにでも来たのかね……』
 「蜘蛛」は巻いていた蜘蛛の糸を壁に貼り付け、ごそごそと方向転換し、何処かへ行ってしまった。誰かがこちらに向かってくる。あの様子じゃリリアではなさそう。私を助けに?いったい誰が……?
 私……ミスティアは、昨日の夜にこの「蜘蛛」に襲われ、気絶し、気が付いたらこの状態だった。夜遅くだったから、谷のみんなは眠りについていて誰一人気付いていなかったはず。ひと悶着したから部屋は散らかったままだろうな……。それを誰かが見つけて……。
 この蜘蛛の糸はかなり強力で、少し触れただけでひっつき、なかなか取れない。そんな糸でぐるぐる巻きにされている私。取れるのだろうか……。

 はぁ、と一息ついて、また思いを巡らす。「蜘蛛」に立ち向かえるのは……いや、あの子も強い子だけど……。
 私は首を横に振った。やっぱりだめ。ウォレス、ここに来てはいけない。……なんとかして逃げ出さないと。だけど、リリアの元へ連れて行くのが「蜘蛛」の使命ならば、大人しく連れて行かれてもかまわない。リリアを逆に連れて帰りたいから。





 ライファス遺跡の出入り口に着いた時、俺……アルスは嫌な気配を感じ取った。サクマの足元にいた召喚獣サフィアも感じたらしく、毛を逆立てて小さく唸った。吹く風が生ぬるい。
「サフィアが唸ってる……。気をつけて進もう」
 サクマが長剣を持ち直した時、やはり奴らは現れた。
 ザザッ、と前方から数匹、いや数十匹もの虫が、闇の煙と共に姿を現した。見た感じ、でっかい蜂だ。お尻の針がきらりと光る。
「うわ……すごい多いよ。片っ端から片づけ……」
「サクマさん、ここは一発サフィアの電撃で散らしてみましょう。その隙に駆け抜けてみる!」
「えぇ?!」
 ウォレスは、極力この雑魚との戦いで体力の消耗をしないように考えているようだ。なかなか頭の切れる奴だな。
「ボスは魔女の僕だしな。下手に戦って怪我でもしたら足手まといになる」
 とか言いながら、俺も武器をセットする。
「…そうだね、ここで疲れたら大変だもんね……。よし、じゃぁ一発頼む、サフィア!」
 サフィアは俺たちの前に立ち、蓄電し始めた。パリパリという音が、徐々に大きくなっていく。そして……

『きゅおぉぉぉぉ!!』

 けたたましい音と共に、電流が四方八方に走り回った。蜂たちは避ける間もなく感電し、ぽたぽたと地に落ちていった。しかし、また黒い闇の煙が現れる……。
「急ごう!」
 サクマが駆けだす。ウォレスが続く。俺も走りだすが、煙から再び現れた蜂が俺に向かって飛んできたので、爪で払いのけた。蜂はバラバラになり、地に落ちた。こいつら、かなり脆いな……。
 後ろで再びバリバリと音が鳴った。俺たちは振り返る事もなく、ひたすら走り続けた。

 走り続けてしばし。サクマとウォレスが、目の前にそびえ立つ塔を見上げていた。どうやら遺跡の一部のようだ。しばらくして、サフィアが走ってきた。
「ここ、怪しいよね」
「サクマさん……ここにきて、正直怖くなってきました」
「えっ?」
 おいおい、ここに来て腰ぬけか?ブラインド平原で魔物と戦った時もそうだったな……。
「そんなんじゃ、リリアを見つけられないぞ?その前にミスティアも救えないな」
 俺は喝を入れた。ウォレスははっとして、首を左右に激しく振った。
「そうですね……。私はリリアとミスティアを助けるためにここまで走ってきたんですものね……。すみません、弱音を吐いてしまって」
 ウォレスは一つため息をついた。気合を入れ直したようだ。
「よし、じゃあいくか」
 サクマが塔に向かって歩き始めた瞬間……

『びじゃぁぁぁぁ!!』

「わっ!」
 間一髪、サクマは何かを避けた。その何かは彼の後ろにいたウォレスに当たってしまった。気合を入れ直した直後だったのに……。
 ウォレスに白い何かがくっついた、というか動きを封じられた感じだ。俺は急いで爪で白い何かを切ろうとした。が……
「あっ!」
 切る前にウォレスが塔へと勢いよく引かれ、吸い込まれていった……。
「ウォレス!」
 サクマの叫びもむなしく、彼の姿は一瞬にして消えてしまった。俺は爪を一旦しまい、塔の入り口の横につく。サクマは俺の向かい側について、そっと中をのぞく。サフィアはサクマの足元に行き、じっと耳をすませる。
「……何も見えない」
「そうか。変な音もなさそうだな」
 サフィアが頷く。よし。
「行くぞ」
「はい」
 俺たちは古びた塔の階段を降りて地下へと進んだ。
  • 19:06 
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 プロフィール

白牙駿華

Author:白牙駿華
某RPG(8から始めた)が大好きな人。

ゆえに、この小説もその影響大なもの。
超スローペース更新ですが、ぜひご覧くださいませ。

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